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花尊し

花尊し

目には目



目には目を、歯には歯を!

紀元前1800年頃 バビロニア王国(現在のイラク)で ハンムラビ法典は作られた。

第196条
もしある市民が他の市民の目をつぶすならば彼の目をつぶさなければならない

第200条
もしある市民が彼に対等の市民の歯を打ち折るならば彼の歯を打ち折らなければならない

同害復讐・同害報復の原則こそ人類が初めて制定した法なのである。
犯罪を抑止するには法を犯すと相応の報いを受けることを徹底するしかない。

同害報復とは、
目を害されたら目を害して良いのではなく、
自分が害された以上に害してはいけないと言う法律なのである。
復讐を奨励するものではなく 同等の復讐以上にエスカレートしてはいけないと復讐を抑制したのだ。

目には目を は上級市民間の約束事、支配者階級の法律だ。
上級市民が下級市民を傷つけたら金ですむし、
奴隷を傷つけたのならもっと安い金額で済む。
奴隷の目をつぶしても自分の目をつぶされることはなく金で済んだ。








ハンムラビ法典は282の条文から成り、
酒場の女主人が酒量をごまかしただけで死刑とか極刑が多いが、
これらは厳密に施行されたわけではなく、
死刑などの重い罰で威嚇し抑止力にしようとしたものだ。

子を成した妻を優遇せよとか、
父親を殴ったら殴った腕(=息子の腕)を切るぞと脅し、
父親を殴っちゃ駄目と諭す道徳書なのである。


第1条
市民が他の市民を殺人の罪で告発し、それを立証できなかった場合、告発者は死刑に処す

罪を訴え出た者が罪を立証できなければ 告発者が訴えた内容と同等の刑を受ける。
罪を立証できない以上それはいいがかりであり悪口であるから 処罰するということ。

第2条
市民が他の市民を呪術の罪で告発し、それを立証できなかった場合、告発者は川に飛び込むべし

河に投げ込んで沈んでしまったら(つまり溺れたら)有罪、浮かんできたら無罪、
人間の判断で罪がハッキリしないのならば 自然(に宿る神様)に判断をお任せするということ。


強盗が捕えられたら彼は殺されなければならない。
強盗が捕えられなかったとき、被害が生命の損失であった場合は、
市長が遺族に対し銀500グラムを支払わなければならない。
(弱者を守るため公費による遺族補償が実施されていた)
医療過誤についての規定もある。
外科医が目の手術に失敗し患者の眼がつぶれたら外科医の手を切り落とさなければならない。
もし目を損なったら彼の目を損なわなければならない。
もし骨を折ったら彼の骨を折らなければならない。
犠牲者及び遺族は加害者に対して復讐権を持つがこれは買い取ることが出来た。

人の妻が夫以外の男と寝ているところを発見されたら二人を縛って水の中に投げ込むべし。
大工が手抜きで頑丈につくらなかった家が崩壊し家の所有者を死に至らしめたら死刑に処す。

ハンムラビ法典には先行する慣習法が存在し、
法の支配が貫徹され、
むやみやたらな復讐などすでに行われていなかった。

法典というより判例集で、刑事というより民事訴訟の判例で、罰金や労務刑がない。
加害者が被害者に賠償するか、被害者は加害者の身体を傷つけるか殺す。
いずれも加害者と被害者との関係で、国家が加害者に直接罰を与えるわけではない。
刑事罰という概念はまだなかった。



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